2014年3月23日日曜日

旭若松 純米 雄町・山田錦 17BY

旭若松の17BYです。貴重な一本、頂きました。
買うとき、いいんですか?って三回くらい聞いた気がします。

そもそも、達磨正宗のように最初から熟成を前提にした日本酒を除けば、ここまで長期熟成したものを飲むは初めてです。しかも一升瓶。
なんだろう、責任感みたいなものが生まれますねぇ。蔵から出荷されたこの一本、お店で責任をもって寝かしてたわけですし、開けて空気に触れてからは我が家の責任ですからねぇ。美味しく頂かないといけません。


さて、購入後冷え冷え玄関放置で2日。程よく冷えてます。

濃い目の色。おかしいなぁ、見た目より薄い。まぁ携帯のカメラで適当にとってちゃ色の再現性はだめですな。それでもまぁ琥珀色はわかってもらえるかも。



香り、チョコの香り。正しくはカカオの香りって言わなきゃなんでしょうけどね。
十旭日のお燗を初めて飲んだ時、チョコだチョコだってびっくりしたんですが、冷やでこの濃厚な香りが立ち上ってくるとは。
すごいんですよ、お燗してるみたいにムワッと。もちろん香りが立ち上る勢いはお燗と違いますけど、開けて注いだら食卓が香ることこの上なく。

最初の刺激はすごく少ない。濃厚だからアタックがやさしいとは感じないけど、よくよく味わってもアルコール感が少ない。なんだかよくわかんない旨い液体。

口に含むと、旨味、香り、苦味が順にせまってきて、喉に落とすと香りが口中に残り、いっぱいになって鼻まで溢れる。ここでようやく日本酒のパンチが出てピリリ、ジュワリとくる感じ。ふわっとアルコール。あぁお酒飲んでたんですよねって、美味いなぁって。

舌にはほのかな苦味を含んだ米の旨味が残る。この余韻が二度目の美味しさ。


時間が経つと空気に触れて穏やかになる。佇まいがものすごく静か。濃厚なアタックまで優しくなって、あれっ?薄くなった?って錯覚する。そんなことないけど。

甘みと酸味がリンゴ、みたいな気もする。リンゴでも爽やかな奴じゃなくて熟しきったやつ。いつも感じるわけじゃなくて、フッと舌で転がすうちにちょっとだけ姿を現す感じの淡い味だけど。
奥さんにはわからんと言われて、強いて果物ならみかんじゃねって。それもわからんけど。

人に伝えたいとき、何かに例えようとするんですけどね、ボキャブラリが貧困だと混乱の元ですな。
(´・ω・`)ショボーン

まぁ、酸味のような酸味じゃないような、甘みも旨みも酸味も渾然一体な味ですから。あの部分が何かに、似てるとかそういうことにならない。混じり合って分離不可能な味。


タコ燻製と合わせる。スモークが融け込む。

その後、野菜とか鶏とかとも合わせていったんだけど、味を吸収するというか、消えちゃうわけじゃないけど、包んでちょっと隠しちゃうみたいな。
もちろん食べて飲んで合わないとかそういうことじゃないけど、寄り添うとかマリアージュとか言うよりも、旭若松が新しい味をお届けしますみたいになる。何が言いたいのかよくわかんなくなってきます。


とりあえず今日は一杯でやめておく。長きにわたってジワジワと飲んでやる。

しかし玄関に戻すか冷蔵庫にするか、変化を楽しむなら玄関かなぁ、でもなぁ開けた後だしなぁ、万が一劣化したら泣くしなぁ…この季節、劣化はないと思うけどなぁ、ヒトも通るわけだしなぁ…

ってことで、冷蔵庫でまったりと管理することにしました。ビビリ。



1週間。
チョコレートケーキと合わせる。マリスさんのクラッシックショコラ。ここのショコラはとっても濃厚ビター。本来は茶色いお酒と合わせるんでしょうけど、これ十分茶色いお酒の風格ですから。

これと合わせて気づいたけど、やっぱりこの酒、ちゃんと枯れてんねんなぁと。若々しい濃厚さはショコラで足される。別になくて物足りないわけじゃないけど、足されて感じる搾りたてを味わうかのような錯覚。



ぐっと我慢して2ヶ月弱経過。

益々チョコ、うーん、カカオ70%って感じ。
苦味が強くなってる。艶のある苦味。ウイスキーの樽で熟成みたいな、そういう要素がなくてこの味ってどんな魔法なんやろ。
フルーティーじゃないけどフルーツ感はある。枯れた、干した果物。プルーンとか。

とにかく苦味が美味くて美味くて、多分ロックで浮かべて飲むといいかもしれない。今度はちょっと試してみよう。



4ヶ月経過。

チョコ感が更に強くなった。
OGGIのショコラデショコラを思い出す。単にカカオだけじゃなくて、スパイスを感じる部分。干し草とか、そんな感じも。

味はさすがに落ち着いていて、濃くても苦くても、どこかその落ち着き懐かしい味。子供の頃、苦くて食べられなかったもの、そんな郷愁がある。

イワシの煮付けと合わせる。
4日経ってコッテリの味。脂によく合う。双方パンチが有りすぎて、これがベストマッチだとは言えないけど、殴り合うような対峙が楽しい。なかなかこういうことはできないなぁ。

この時点で、残りは1/3程度。よくまぁ我慢したもんです。



いつ以来だろう、2ヶ月ぶりとか?買ってから、半年強は経ちます。

チョコ+醤油?

舌に当たる感じがトロトロ。こりゃ別物になったな。
もうしばらくおいたら焼酎の原酒になりそうとは奥さんの言葉。

苦味がガンと後味で主張し、いつまでもしびれを残す。そしてここまで熟すのかと、熟してなお旨いのかと。

この印象は、リキュールとかブランデーとか、そんな種類のお酒で感じた風情なんですけどねぇ。すごいなぁ、日本酒って。いや、選ばれし日本酒って。

金陵のレバーと合わせる。
渾然一体となる新しい食べ物?飲み物?いやはや口の中がよくわからない状態です。ねっとりとしたペーストになり、トロリと舌にまとわりつき、喉にじわっと旨みを残し、そんで消えない香り。



そろそろ飲みきろうかと思ってる8ヶ月目。

SHIBUYA CHEESE STANDさんのブッラータと合わせる。
出会いは頂きものだったのですが、あまりに美味しくて自分でも購入してきたんです。

ところが、家にワインがないという事実を忘れてました。100本近い酒があるのにワインがないってどういうことやねんって気がしますけど、それならそれで合わせる酒はいくらでもあるわけでして、ワイングラスで旭若松なのです。

枯れた風情が正に年代物の白ワインのようで、フレッシュジューシーなブッラータにエロスを注入。



ついつい飲み切るのが勿体無くて1年経過。

もうすでに甘みはほぼなく、深いコクと苦味。チョコとか言ってたけど、そんな優しさすらももうない。
でもうまい、めっちゃうまい。余韻は長いけど、優しく伸びて強くない。

そろそろ本格的に枯れ始めてきた感覚があります。でもまだ一杯分くらい残ってるんだよなぁ。

ということで、シメはぬる燗で。
旭若松は熱めでもまったく問題ない酒質だと思ってますが、これは特に枯れていることもありますので、優しくじんわりと解いていくようなイメージなのです。

いやぁもう、言うことないなぁ。

先日新宿のさけくらべさんにおじゃました時にご主人と話してて、旭若松は燗酒がいいでしょうという話をしてたのです。至極同意なのですが、個人的には冷をウイスキーを舐めるが如く飲むのも好きなんですね。でもまぁ実際にお燗して思うのは、この方が万人に美味しさは伝わるのかなということです。まぁそんなこと言っても好きに飲むんですけどね。



それにしても長かった。一本の日本酒をここまで時間をかけて飲んだのは初めてです。まぁ冷蔵庫的にはもうやりたくないですけど。

結果的に、開栓してから1年経つとさすがに枯れたという印象が出てきます。でも枯れて美味しく無くなったかと言われるとそんなことはなく、美味しさが減ったのかと言われても、いや形が変わっただけですなと。そしてお燗すればそんな話はどこへやら、沸き立つ旨みがやっぱり楽しめるのです。強く変わらない存在感の味がずっとありました。稀有なお酒なんだと思うんですよ。


なにがここまで僕の琴線に触れたのか判らないのですが、まぁほんと偏愛してしまいました。これまで旭若松は数本飲んできていますが、同じようで違う味で、違うようで同じ味。旭若松とはこういうお酒なのですという芯がブレないんですね。

美味いなぁ。また飲みたいなぁ。素敵なお酒です。




旭若松 純米 雄町・山田錦 17BY
那賀酒造有限会社
精米歩合 雄町・山田錦 65%

横浜君嶋屋さんで購入。

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