鹿児島に来たので、焼酎バーに行くでございます。そう、プロの業で焼酎を飲みたいと。
学生時代に焼酎の味を知ってからはや10数年。でもほとんどストレートかロックでしか飲んでませんでした。水割りってなんかもったいないし、お湯割りとかそもそも考慮されないって感じでして。
でも、以前奄美に行った時も思いましたけど、地元の人がぐいぐい晩酌で飲むのは水割りかお湯割り。鹿児島の人の話を聞いてもやっぱりどっちか。そうそう、中村酒造場の蔵人の方は夏でもお湯割り派って仰ってました。
まぁ好きに飲めばいいっちゃそうなですけど、そもそも僕は美味しい水割りとかお湯割りをわかってないなと。
前割は以前ちょっとやってたんですけど、まぁめんどくさいということで我が家では定着せず。確かに美味しかったんですけどね。
まぁそんなこんなで前振りが長々と続きましたが、焼酎の楽しみかたを学びにBar S.A.Oさんにお邪魔してきました。
前割してある佐藤の黒でスタート。
久しぶりの佐藤、こんなに癖がなかったっけか。前割の威力はすごいけど、ちょっと物足りなくなるくらいのやさしさ。いやまぁそうなるための前割ですけど。
2杯目は宝山の綾紫の今年のやつ。3/1に発売の一本を水割りで。独特の香りが水割りのおかげでよく立ち上り、芋の特徴がよく分かる。もう結構前のことだけどロックで飲んだことはありまして、香りよりも舌で感じる癖が強かった記憶が残ってます。でも今回はその印象とはまた違い、香りが立つと癖が落ち着くというか本来こういうものって感じにしっくり来る。
あ、写真は撮り忘れました。
3杯目も水割りで。全く知らなかった銘柄、大和桜の紅芋。宝山の綾紫よりも骨太で好みだ。紅芋の感じはそれほど強くなくて、かと言って黄金千貫ほど甘みが立つわけでもなくて、芋の澱粉の層みたいな味の層がある。あーこりゃいいなぁー。
4杯目。なんか面白いのを水割りでってお願いしたらこれ。もちろんお初です。そもそも九州130号って芋自体知らないですしって思ったら、今はブランド名がついて「紅まさり」って言うんですね。まぁその名前でも知りませんでしたけど。
これがまた、香りと味のアンバランスさが不思議な感じでして。かなり豊潤に甘さをまとった香りが立つんですけど、喉を通ると芋感は少なくてさっぱりと切れ味がいい。舌の上までは芋由来の甘さが全開なんですけどね。
締めにお湯割りをお願いしたら、かなり気に入った大和桜のレギュラーを。お湯割りならこっちなんですよとのこと。
やっぱりこの蔵の味は好みだ。すごく芯があって後味がしっかりと残る。美味いなぁ。
カウンターでお邪魔してましたので、目の前でサービスしてもらってたんですが、水割りもお湯割りも所作が美しいんですね。
で、美味しいお湯割りを作る基本を、実験を交えて教えて頂きました。
グラスにお湯を入れて、もう一つのグラスに移し替えてってのを何回かやって温度をちょっと下げたお湯と、それと同量の保温状態だったのお湯。
そこに焼酎を注ぐわけですが、先の温度を下げたほうには縁を伝わせるゆっくりとした注ぎ、もう一つのほうにはとぷっとまぁ普通にお湯割り作るときの感じで。
その状態で飲み比べると、もう同じ銘柄、同じ濃さで作ったとは思えない違い。
温度を下げてゆっくり注いだ方は、今日頂いたお湯割りと印象が同じ。一方あえて雑に温度も高いままで作った方は、香りも味がスカスカになる。そして無駄にアルコールが立つ。
さらに、これは温度が下がっていっても変わらないんですね。美味しく作ったお湯割りは、その温度自体が下がっても美味しいお湯割りのまま。一方この他順を踏んでない方は温度が下がると更に薄いだけの酒になってしまう。
結局、温度が高すぎると焼酎を注いだ時にアルコール分が揮発しちゃうから美味しくないんですね。なので温度はアツアツからはちゃんと一呼吸置くこと。こちらのお店では、ロックアイスを入れて軽くステアしてました。差し水の代わりの刺し氷とでもいいましょうか。
そしてゆっくり注ぐのは、アルコール分を揮発させずお湯としっかり対流させるため。じゃぼって注ぐとそれだけでいろんなものが飛んじゃいますと。
深い、でもほんと簡単なことなんですよね。
実際に自分でやってみれば、大した手間でもなくて劇的に美味しくなる。いやーいい勉強になりました。
この焼酎はどんな飲み方がお薦めですかと聞けば、味の特性を含めいろいろ案内して頂けるのですが、これにはこの飲み方と決めつけてしまうのが一番ダメだと。お薦めは提案できても、これでなんて決め付けられない。焼酎の楽しみ方は人それぞれだから、好きに楽しんで貰えればいいんですよと。ただ、こうやってちょっとした技術があると美味しく飲めるんですよと。
焼酎の繊細さと懐の深さを体感した次第でございます。
BAR S.A.O
鹿児島市東千石町5-2緒方ビル 2F
099-239-4461