平成11年って、1999年。えぇ、2000年代じゃないんですよ。いやはや、よくぞ寝ていてくださいましたという一本です。
ちなみに八百新酒造さんの雁木は奥さんの好きな銘柄でして、もちろん僕も好きなお酒。力強くともキレイな印象が残る良酒と存じております。
タイトルの銘柄には雁木と書いてますが、そもそも雁木というブランドが生まれたのは2000年。このお酒は正確には雁木じゃないんですよね。ラベルにも雁木とは書いてませんし。まぁじゃあもう一つのブランドの錦乃誉なのかと言えばそういう話でもなく。
まぁ便宜上、雁木と書いておりますので、普段の雁木とは違うものということでお願い致します。
というか、ここまで書くなら雁木と書かなきゃいいだろって話ですが、八百新酒造さんと言えば今の名代は雁木ですからねぇ。困った困った。
前振りはこれくらいでして、開栓でございます。冷蔵庫から出しての冷や冷やで開栓。
冠頭を外すと貯蔵の跡が。歴史を物語っております。念のため、ティッシュでよく拭いてから開栓。見た目ほど汚れてなかったんですけどね。
紹興酒のような薫りをふりまく。きっちり冷えててもこの存在感。熟々しております。
味もその風情。渋く、立ち香で感じる旨みを、味の中に探したくなるような枯れ具合。
舌の上で転がすと、ムンとする香り。旬は過ぎた、枯れた味なんだけど、まだなにか色気がある。奥さんは味見の瞬間にぬる燗がいいなと。納得。
見ての通り、素晴らしい黄金色に熟成しております。日本酒とはもう言えないんじゃないかという佇まい。
温度が上がると旨みが戻ってくる。もちろん強くなくてじわっとにじみ出るようなコク。
少なくとも常温くらいまで戻して飲みたいなぁ。っていうか、夏に開けるじゃなかったな。
3日目の熟成鯛の刺身と合わせる。
魚の生臭い雰囲気が(実際には生臭い訳ではないですけど)消え、というか魚が洗われて、そして旨みが融合する。ふむ、悪いわけがないけど、もっと強いものと合わせたくなるのは自然の流れでございます。
ちょっと飛び道具。生ハムイチジク。
なんだろうなぁ、ごちゃっとした謎の味。甘さも塩気も旨みも、みんなぼやっと仄か。
美味い、うん、難しい味。口に含み、イチジクを崩し、生ハムを解き、纏めて酒で溶く。
美味すぎる。表現できないこのもどかしさ。味って無限にあるんですねぇ。
お酒が枯れて旨みが抜けた部分に、食材の旨みがハマるということなんでしょうか、多分これは何にでも合うし、何に合わせてもこの酒の味が残る。
ともかく、これは常温、ぬる燗と、温度を上げて楽しむことに致します。
…
冬も終わろうかという3月。かれこれ開栓から半年経過しました。めんどくさがりはなかなかお燗で飲むことをせず、未だに試してません。が、どんな感じかなと冷たいまま飲んでみますと、えぇ、なんですかこの旨みの充実っぷりは。
空気に触れてなのか、完全に熟成した上で旨みも整っています。枯れたなんてとんでもない、フレッシュジューシー。こんなにも熟成した、醤油か味噌かって香りで、紹興酒ですか?って感じの味わいではありますが、糖分のねっとり感は当然少なくて軽快と感じる時さえあります。
冷の熟成酒、ありなんですねぇ。
…
ぬる燗。ようやく試します。
いやもう、確かに判りやすく旨みも香りも華やぎます。燗して旨いことは想像の範疇内ですから驚くことではありませんけど、やっぱりこういう熟したお酒は燗酒が王道だなぁと。いや、王道かもしれんけど、冷熟もいいんですよと強がりたい。
…
そんなこんなで半年以上かけて飲んできました。
旨みが枯れた分だけ、なにか別の味が濃くなっています。こういうのが時を飲むとか言うんでしょうね。ワインのビンテージを楽しむことに通じるのかなぁと。
同時期に旭若松の17BYも飲んでて思ったことですが、熟したお酒はお燗に向くのは当たり前だとしても、お燗をしなくても旨い熟成酒というのもあるんだなぁということ。いくつかの銘柄は冷熟という楽しみ方もあるんだと。
いやまぁ、面倒くさくて冷で飲んでるけど、ちゃんと美味しかったですよってだけのことですが。
八百新酒造株式会社
精米歩合 山田錦/ヤマホウシ 60%
アルコール度数 15度以上16度未満
横浜君嶋屋さんで購入。
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