2013年9月30日月曜日

喜久醉 純米吟醸

愛する喜久醉の純米吟醸です。

我が家にとって、確実に最も飲んだ回数も量も本数も多い銘柄なんですが、その大部分は特別本醸造。なんせ日々のお酒でございます。喜久醉が日々の酒って事自体、日本酒好きには垂涎でしょうけど、えぇ、いいでしょw

ですが、今回は実家の法事の後の鵜飼いで供するお酒なので、初めて喜久醉を飲む人々に向けてちょいと奮発したわけなんです。


クーラーボックスの中できっちり冷やした状態で抜栓。花冷え程度でしょうか。

川風の中でも感じられる整った香り。華やかでありながら強くなく、甘さの気配があるけど澄んだ香り。既に別格の風情が感じられます。

口に含むと衝撃のキレイさ。甘いとも辛いとも言えない、水のようと言いたいけど旨みはあり、でも喉越しは酸がないのにさっぱりと。

いやぁ、美しさの次元が違いますなぁ。吟醸造りらしい香りもありつつ、米の香りもありつつ、とにかくバランスが良く飲み飽きしない。

いや、飲み飽きしないお酒は色々ありますが、飲み続けても感動が持続するお酒はそんなにないでしょう。


鮎の塩焼きと合わせる。
鮎の香りがよく分かるキツくない塩加減の身をほぐし、その味を抱き込む。
腸のほろ苦さを溶かし、旨みに変える。いやもう申し分ない。これまでさんざん海のものに合わせてきましたが、川のものだと喜久醉味が少し丸くなるというか優しくなる印象。まぁ比較対象が特別本醸造の喜久醉ですけど。

そういえば、以前はよくうなぎの白焼にも合わせてました。一癖ある脂を溶かして旨みに寄り添う風情は、さすがの喜久醉だったわけです。そりゃ癖があると言われる川魚にも相性が良いわけですし、ましてや香魚であればなおのことでございます。

とか書いてますけど、そもそも喜久醉で相性が悪かった記憶がないなぁ。


いつもの喜久醉と何が違うかと言われると、まぁとにかく美しかったです。
旨みの本質や料理に寄り添うスタンスはそのままに、研ぎ澄まされた美しさを堪能できる一本でした。

最近は食中に合わせることを基本のスタンスにしているせいで、吟醸造りをさほど選ばなくなってるんですが、そんなことはすっかり忘れてました。良酒は飲む時を選びません。

そんなこんなで、予定通り皆様からも絶賛を頂きまして、うそんこソムリエの役目も無事果たせた次第でございます。ありがとう喜久醉。









喜久醉との出会いはかれこれ7,8年前、静岡に旅行した際に、静岡酒を揃えている居酒屋で右から左を飲んでいったときのこと。

当時はいわゆる旨口が好みだったので、静岡酒の酸のキレイさにはどれを飲んでも驚いたものですが、その中でも突出して驚いたのが喜久醉なんですね。昔の携帯のメモ帳に、その時飲みながら書いてたメモがあったのですが、喜久醉にだけは絵文字のハートが残されてました。

その後、日頃お世話になってる取手市の中村酒店さんが取り扱いを始められた時は、ずいぶん歓喜したものです。

そういえば、あの時の喜久醉はなんだったんだろうか、と思うこともあるのですが、今回の久しぶりの純米吟醸はあの感動を蘇らせてくれたというのが答えなのでしょうか。


喜久醉 純米吟醸
青島酒造株式会社
精米歩合 山田錦 50%
酸度 1.2から1.5
日本酒度 +3から+7
アルコール度数 15度以上16度未満


取手市 中村酒店さんで購入。

2013年9月28日土曜日

外飲みメモ:喜久醉・太平海・鳳凰美田・薄墨桜、長良川鵜飼いと天然鮎の塩焼き弁当@川原町泉屋

岐阜の実家に法事で帰省したんですが、お経もそこそこに、親族一同で鵜飼いを楽しんで参りました。

30年数年前に、今は亡き祖父が鵜飼船を仕立ててくれて、この時も親族一同で鵜飼い見物したことがあるのです。なんですが、僕はまだガキンチョでして、全く記憶がありません。写真の中にボヘーと写っているだけでして、今回が事実上初めての鵜飼いでございます。

ちなみに4歳上の姉が、幼稚園に入るか入らないかくらいだったとか言ってます。そりゃ記憶にあるはずもなく、両親の「あんた覚えてないの?」という言葉には苛立ちを覚えずにはいられませんw


さて鵜飼船なんですが、ツアーとかホテルのセットなら料理や酒がついてくるんでしょうけど、個人で船を仕立てる場合は船頭さんがいらっしゃるだけなんですね。知りませんでした。

なので、お弁当を鮎料理の名店の泉屋さんにお願いして、酒は適宜持ち込みです。

ということで、日本酒を持ってこいと言われまして、以下の3本をチョイス。

更に姉が、達磨正宗で有名な白木恒助商店さんで、
  • 薄墨桜 純米 ひやおろし 24BY
を購入してきたので、計4種類のお酒を長良川の天然鮎で楽しむというなかなか贅沢をした次第なんです。


乗り場に行くと、長良川艶歌の歌碑が迎えてくれます。えぇ、一度も聴いたことありませんけど。

近くのおみやげ屋さんには水森かおりさんのサインがありまして、さすがご当地ソングの女王だなぁと眺めておりましたが、後で調べたらこの方も長良川の歌を歌われてるご縁なんですね。
旅行する度にあっちこっちでサインを見てる気がしますが、僕の出身地もその餌食になっていた恩恵に預かっていたとは。

余談ですが、岐阜の歌で一番有名なのは美川憲一さんの柳ヶ瀬ブルースだと思ってますが、これも全く聴いたことがありませんし、今更YouTubeを検索する気もありません。
ただですね、今回10年振りくらいに柳ヶ瀬に行ったら恐ろしいほどのシャッター街で。地方都市の悲惨な現状を突きつけられてしみじみした次第でして、やななも引退した今、どうしていいのか途方にくれているわけなんです。

余談ついでなんですが、数年前、岐阜に出張で行った取引先の方から突然電話がかかってきたことあります。えぇ、駅前が寂れすぎててどうしたらいいか困ってるというお叱りの電話でございました。

散々ディスってますけど、岐阜はいいところですよ。名古屋近いし植民地やし。



まぁそんなこんなで夕方になりまして、屋形船の前に人が集まってます。
写真撮るの忘れましたけど、鵜飼いの前に鵜匠さんが色々と説明をしてくれるんですね。

長良川の鵜飼いの鵜匠さんは、宮内庁式部職という国家公務員なんです。岐阜市の長良川鵜飼いと、ここからもう少し上流の関市の小瀬鵜飼の鵜匠さんだけなんだそうです。

この話は、岐阜人が他の県の鵜飼いとは違うんじゃいって自慢するポイントですから、岐阜人の人間に会ったらこのネタで褒め称えておくといい気分になってくれるんじゃないかと思っております。県庁の裏金とか裏金とか、褒めてもらえるネタがない岐阜人に優しくしてあげてください。

ちなみに宮内庁の職員というだけあって、ここの鵜飼いで捕れた鮎は年に数回皇室に献上されます。その献上鮎を捕るための場所が今も御猟場として定められてまして、当然釣りとか出来ないんだとか。21世紀になった今も存在してるんですね、御猟場。



日も暮れて乗船。
一番小さな屋形船は15人乗りなんですが、このサイズだとモーターとかエンジンとか付いてないんです。なので、ゆったりと静かな舟遊びが楽しめるんです。



さてお弁当。鮎を始めとした川魚の数々。



お弁当に過度の期待は禁物と思ってましたが、いやはや流石は泉屋さん。非常に美味しかったですし、なんとも日本酒に合うモノたち。

子供の頃は食べ飽きるくらい鮎を食べてましたが、昨今はそんな贅沢も出来ない日々。久しぶりに美味しい鮎を頂きました。

あ、岐阜の人間がみんな鮎を食べ飽きるくらい食べれるかと言えばそんなこともなく、我が家は親戚に釣り人がいたおかげなんですね。

でも鮎の甘露煮は給食で出た記憶があるなぁ。



本題のお酒たち。

喜久醉。
さすがです。一番繊細かなと思って最初に抜栓したのですが、もちろん繊細さは言うまでもなく、そして美味さも言うまでもなく。いやぁ、他のお酒も良かったんですが、ちょっと格が違いました。わかっちゃいたけどビックリ。詳細は別のポストで。


薄墨桜。
白木恒助商店さんのお酒は達磨正宗しかないと思ってましたが、岐阜のお米であるハツシモを使った別の銘柄もあるんですね。存じてませんでした。
達磨正宗に通じる雰囲気はこのお酒にもたっぷり感じ、ひやおろしが故なのか蔵の個性なのか、ずんと舌に残る旨みが印象的です。きっちり冷えているくらいが美味しく、温度が上がると甘さが勿体無い印象。蔵のページには常温も推薦されてますが、きっちり冷えてるか、お燗するといいんじゃないかなと思いつつ。
それにしても、薄墨桜という名前と味の印象はかなり遠くて、うーん、ご当地的な名前はいかがなものかと思わなくもないわけです。つーか、蔵の場所と薄墨桜の場所は関係ないしなぁ。


太平海。
吟醸香担当として持ってきた一本。食中用というよりはまったり味わい用のつもりだったんですが、予想に反して食中でも面白い存在感。香魚と呼ばれる鮎とガップリ組ませるのにふさわしい一本でございました。


鳳凰美田。
ワイン好きがいるのは知っていましたので、ちょっと変化球として用意。
夏を越してちょっと米の旨みが出過ぎてたのが予定と違ってましたが、それでも白ワインを思わせる舌触りは鮎との相性良く、鳳凰美田と川のものというのはちょっと掘り下げてみたくなる内容です。


鵜飼いって、なんだかんだ言っても遠くの篝火をぼんやり見る程度なんだろうなぁと思ってましたが、意外と近くで見ることが出来るんですね。

火の粉舞い散る中、浮かび上がる鵜匠と鵜のシルエットはなかなか味わうことが出来ない日本の伝統美でございました。

そんないいタイミングの写真は撮れませんでしたけど…



そんなこんなで、秋の気配を感じつつの川遊び、美味い料理と美味い酒で堪能した次第でございます。


お弁当:
川原町泉屋
岐阜市元浜町20
058-263-6788


お酒:
喜久醉 純米吟醸
青島酒造株式会社
精米歩合 山田錦 50%
酸度 1.2から1.5
日本酒度 +3から+7
アルコール度数 15度以上16度未満


太平海 純米吟醸 四十日もろみ 濾過前取り生詰 24BY
府中誉株式会社
精米歩合 五百万石 50%
アルコール度数 16度


鳳凰美田 純米吟醸 無濾過本生 WINE CELL 24BY
小林酒造株式会社
精米歩合 山田錦 50%
アルコール度数 16度


薄墨桜 純米 ひやおろし 24BY
合資会社白木恒助商店
精米歩合 ハツシモ 70%

2013年9月26日木曜日

謙信 特別純米 生酒 24BY

最近よく目にする銘柄、謙信の特別純米生酒です。

実はこの謙信という銘柄、以前一度購入した時に、どうにも好みに合わずにしょんぼりしてたんですね。そんな話をしてたので、今回の謙信はそんなことないはずという酒屋さんのオススメなんです。


程々冷えた花冷え程度で開栓。

柔らかく甘い香り。濃い香りの気配がするんだけど、実際にはそれほど強くなく。

口に含むとしっとりとキレイな甘さが舌を包みこむ。特別純米だから香りに吟醸香はないんだけど、甘さを中心としたしっかりとした香りが鼻に抜ける。

わかりやすい、シンプルでキレイな甘みの香りと味。雑味がなくトロリとした口当たりで、甘み自体は濃く感じる。

りんご?フレッシュな風味もあって、上述の甘みを切るようなアクセント。

単純というと聞こえが悪いけど、プレーンなお米の甘みとでも言いましょうか。
温度が上がると甘さが増し、さらに濃厚な佇まいにもなってくる。



1週間。
トロリとした口当たりは変わらず、苦味のような味の重なりが出てくる。
度が過ぎると野暮ったくなりそうだけど、当日のフレッシュな香りと味のあと、コッテリ気味を楽しめるから、意外と持ちは良さそう。

でも甘さが味の中心だから、ダレる時は一瞬だろうなぁと警戒してしまいます。見極めが重要でございますな。



生酒らしいフレッシュさが、甘さを程よく爽やかにしてくれてたのが好印象でした。火入れだと甘くなり過ぎないかなという気配を感じたんですが、まぁそれはともかくこのお酒は大変美味しかったです。

もしかしたらロックで氷を浮かべてもよかったかなと思う風情でして、その濃さ故に我が家にとっては一升瓶はちとキツイ。でもお店で見たら一杯飲みたくなる良酒でございました。






謙信って、「蔵元を知って味わう日本酒事典」の著者でいらっしゃる武者英三さんプロデュースのお酒なんですね。
この本、内容も良かったですが、最も良かったのはあとがきでして、専門家がぶっちゃけていいのかという賛否はあれども、思わず首を縦に振ってしまうお話だったなぁと思いだした次第で。


謙信 特別純米 生酒 24BY
池田屋酒造株式会社
精米歩合 55%
アルコール度数 17度


取手市 中村酒店さんで購入。

2013年9月24日火曜日

墨廼江 限定純米 ひやおろし 24BY

2013年の冷卸第6弾は、愛する墨廼江のひやおろしです。

毎年飲んでるはずなんですが、このラベルに見覚えがないのは何故でしょうか。人気の品なので、毎年飲めてないだけなのかもしれませんが。

僕が外出している時に、奥さんが開栓。
めっちゃ美味いと連呼していましたので、期待して頂くであります。

2日目。
青いコメの香り。加えて爽やかに抜ける甘い香り。
口に含んだ瞬間は果実のような瑞々しさ。舌の上では、一転コメ由来のコクが出て、鼻に抜くとまた爽やかフルーツ。コロコロと表情を変えるのが面白い。

喉の奥でほんのり刺激が出て、喉に落ちて忘れた頃に舌がじわじわと旨みの記憶を教えてくれるような、口の中全体で余韻を楽しめます。
酸味が立つわけじゃないけど、切れ味の良い爽やかさが印象的。

奥さん絶賛だけあって、確かに美味いなぁ。


秋刀魚塩焼き。問答無用すなー。脂の流しっぷりも、肝の溶けっぷりも、いやもう専用に誂えたかのようなマッチング。



3日目。
昨日より果物系の甘さが立つ。ちょっと温度を上げておいたのがよかったか。桃というかぶどうというか。

2杯目までは非常に美味しいんだけど、3杯目でちょっとアルコールが香るというか重たく感じる。温度が上がりすぎると刺激が出すぎるのかもしれない。
墨廼江で重たいという印象を受けたのは記憶にないんだけど、かと言って味自体が濃すぎるとか重たすぎるというわけじゃないから、何に由来しているのかちょっと判じかねるなぁ。



あっという間に飲んでしまったのですが、奥さん的には初日が一番良かったと。

3杯目以降のパンチが効き過ぎる件は、今になって思えばエアレーションすればよかったんじゃないかと、ちょっと後悔。エグみというにはキレイなお酒なんですが、それでもまぁ米の渋みというか力強さが上振れするようなこともあるんでしょう。エアレーションはそんな時にこそ、空気に触れさせてまったりさせるというのに。そして墨廼江はエアレーションとの相性もよかったのに。

と、今更ながら愚痴愚痴言ってるわけですが、人気のこのお酒は既に完売してるんですよね。しまったなぁ。

ともあれ、さすがの美味しさを堪能させて頂きましたし、震災以降ちょっと味のりがよくなった墨廼江さん的には、この濃さと旨さとキレというのはひとつの形として固まったのかなぁなんて思った次第なんです。






墨廼江 限定純米 ひやおろし 24BY
墨廼江酒造株式会社
精米歩合 60%
アルコール度数 16度


取手市 中村酒店さんで購入。

2013年9月22日日曜日

農民ドライ 2012

5月にココ・ファーム・ワイナリーさんを訪問した際に購入した1本、農民ドライの2012です。

我が家のセラーという名の物置に眠っておりました。いくら物置が涼しいとはいっても、ちゃん温度が管理できるセラーではないわけです。劣化するほど暑くなる場所ではありませんが、夏の暑さの前には飲まなきゃねと言いつつ…夏を越してしまいました。
万が一劣化してたら、ワイナリーにもワインにも申し訳が立ちませんと思ってましたが、良いワインは強くもありますね。劣化どころか程よく熟して大変美味しかった次第なんです。


抜栓と同時に強く香る。香りの質は硬く清廉な印象。

スマートな酸味。余韻も短くスマート。果実の甘みが少しだけ香り、感じたと共にさっと消える。
ドライという名にふさわしい切れ味なんですが、味わい自体は濃くてぎゅっと詰まった印象を受ける。


桃とモッツァレラ。
完熟の桃の甘みが、辛さをよく中和する。フレッシュチーズには勝ちすぎるくらい、ワインの味を強く感じるんだけど、桃のおかげで全体のバランスは至極良いですなぁ。



以前も飲んだことはあるのですが、ここまで美味しかった記憶がない、という失礼極まりない話なんであります。

でもでも、これは非常に美味しかった。

日本酒と焼酎を普段飲みしていると、果実の味では少々物足りない印象のことが多いんですよね。
これはそんな偏見バイアスをものともしない充実の味わいでして、2012というビンテージがよかったのか、夏を越してひやおろし的に美味しくなったのか。

いずれにしても、再び飲みたいワインが増えるのは嬉しいことでございます。

本当は、夏のガッツリ葉が茂った時期にもおじゃましたかったんですが、なかなか時間が取れず行けずじまい。収穫祭にも行きたいんですが、めちゃくちゃ混むという噂ですし人混み嫌いなヒキコモリですし、どうしようかなぁ。






農民ドライ 2012
アルコール度数 10.5%


ココ・ファーム・ワイナリーさんで購入。

2013年9月20日金曜日

武勇 純米吟醸 ひやおろし 24BY

2013年の冷卸第5弾は武勇です。

武勇は愛する銘柄の一つなんですが、今年はどうも我が家と相性が良くない印象が続いてまして、ここにも書いてないものがあったんです。

そんなこんなで、なんでだろうなぁと思いつつの冷卸を頂いてみました。


ほぼほぼ冷えてる状態で開栓。花冷えくらいかな。

薄い吟醸香。すうっと抜ける細いキレイな香り。
口に含むと穏やかな旨みが、武勇らしくない濃さで味わえる。そう、これは純米吟醸でした。個人的には武勇の真骨頂は吟醸造りじゃないと思ってますので、ちょっと頭を切り替えないといけません。

決して吟醸の武勇が悪いというわけじゃないんですが、吟醸造りじゃないお酒の場合、コシのある十分な旨みと米の香りがガツンと楽しめて、誤解を恐れず言えばちょっと野暮ったいと感じるほどの風合い。でも含み香は美しく、切れ味よく喉に落ちるという、飲兵衛のための骨太酒という印象があるんです。

ところが吟醸造りになると一転、キレイさが先に立ち、あれ?旨みは何処?って探しだしたくなる印象。舌で転がすとあぁ武勇でしたねってその旨みが出てくるんですが、とにかく酒質というか味わい方がガラリと変わるんですよ。

そんなわけで改めて味わうと、大人しい吟醸香の奥にちゃんと武勇らしい旨みがあり、甘さを抑えた、でもドライとはならないマットな味わい。

もう少し温度を上げると、先ほどよりも旨みが濃く出てくるようになり、辛味も感じやすくなる。


ヤンソンさんの誘惑と合わせる。
ねっとりとしたクリームとはよく合うものの、アンチョビとはちょっとケンカするかなぁ。

ヒイカとバジルのトマト炒め。
海産物でもバジルやトマトといった野菜にまみれてる方が合う。武勇は割りとオールマイティーに合わせられると思いつつ、劇的に合うのはなんだろうなぁとちょっと考えてしまいます。



6日目。
樽香のような香りがフワッとする。苦味がじわりと滲み、吟醸感より純米感が先にくるようになった。

サンマ刺しと合わせる。
ねっとりの旨みとなかなかの相性。でもちょっと違うなぁ。青魚の香りがダメなのか、脂がダメなのか。



吟醸造りだからということもありますが、あぁ一夏超えて味のりがうぉぉみたいなガツンとした感動がないのは何故でしょうか。美味しいんだけど、ひやおろしと言われるとあれーという気になるんです。

うーん、ラベルにこれだけ大きくひやおろしって書いてなければ、その前提を忘れて美味しいお酒として飲めるんだけどなぁ。

あ、美味しいんですよ、お酒としては。激旨とは言わないまでも、佳酒といった趣で。でも何かがしっくりこないなぁ。

武勇については、久しぶりに定番の純米酒を飲んで、この印象をリセットしなければいけないのかもしれません。
あぁぁぁ、全然褒めてないけど、美味しかったけど、なんかスッキリ褒められない…






武勇 純米吟醸 ひやおろし 24BY
株式会社武勇
精米歩合 山田錦/五百万石 58%
酵母 K-1001-B/K-9-B
アルコール度数 15度以上16度未満


取手市 中村酒店さんで購入。

2013年9月18日水曜日

宙狐 純米 山廃原酒 ひやおろし 24BY

2013年の冷卸第4弾は、岡山の宙狐の山廃です。
昨年飲んだ山廃が出会いのお酒ですので、冷卸も山廃を選択ということです。


冷蔵庫から出しての冷や冷やで開栓。

立ち香はごく薄い。
ほんのりの苦味が先に来て、甘み、旨みが湧き、ジーンと辛味に変わる。
山廃っぽさはまだ薄く、舌の上でほんのり乳酸の香りがある程度。ただ、味わい自体は層が厚く複雑。甘さも苦味もあり、一癖ある酸味が舌の奥に残る。

少し温度を上げていく。前回の記憶では、常温くらいまで温度を上げたほうが味のりが良かったという記憶があり、これもそのあたりを狙って見る。
乳酸が少し強まり、全体的に厚みを増す印象。常温まで行かなくても、冷えすぎなければ良いという感じでしょうか。



2日目。
トゲトゲしさや苦味が消えて、濃厚でありながらさらりと飲める味に進化。
旭若松らしいという記憶に合致する美味しさ。

おりがらみを飲んだ時も、少し空気に触れさせた方が美味しいと言ってますから、きっと2日目とかエアレーションとの相性が良いということで確定したいところです。あぁ、開けたてでエアレーションすればよかった。


ムール貝の蒸し物。
濃厚な貝の出汁と混じり合い美味い。ガツンとやりあうのがよいなぁ。



たこのカルパッチョと合わせる。
塩気を含んだタコの旨味が溶け込む。キャラメル感がある濃厚な酒質には肉かなと思ってけど、濃厚であるなら魚貝との相性も良いんですね。まぁ肉と合わせてから言えって話ですが。



7日目。
ビターさが増す。冷えすぎてないほうが良いから、涼冷え程度まで上げてみたが、やはり正解ですなぁ。

秋刀魚塩焼きと合わせる。
悪くないけど、肝の苦味がちょっとけんかするかな。肉の方が合うかな。

さんま刺し。
こっちのほうがよいですな。生々しい癖との相性が良い気がする。



結局肉と合わせることなく終わってしまったのですが、それなりに癖のあるものとの相性が良いんじゃないかという気がします。繊細な味だと宙狐が勝っちゃうかなと。

僕は飲まなかったんですが、奥さんは6日目でイマイチになってきたって言ってました。冷え冷えで飲んでるからそういう感想だったのかなと思ってます。7日目でも、常温近くの味はなかなかの美味しさでした。

ちょっと癖のある後味、酸味なので、優等生なお酒ばかりじゃなくて変化球的な感じでお店にあると、そのお店の懐が深く見えるんじゃないかなんて言ってみたり。






宙狐 純米 山廃原酒 ひやおろし 24BY
有限会社田中酒造場
精米歩合 60%
アルコール度数 17度以上18度未満


取手市 中村酒店さんで購入。

2013年9月16日月曜日

外飲みメモ:新作「龍宮美山錦」を目黒で楽しむ@目黒 夢酒SanMA

今夏最大の出来事といえば龍宮の美山錦なんです。えぇ、私的にはそうなんですよ。

我が家でも早々に購入して楽しませて頂いておりますが、そんな新作を引っさげて蔵元がソムリエをしてくれるというイベントがありまして、そりゃ行かねばいけませんということなんです。

目黒は夢酒SanMAさん。気仙沼のお魚と鎌倉の野菜が楽しめるお店でございます。

店内、至る所にイベントの告知。
(奄美大島自体はさんご礁の島じゃないですけどと突っ込みたいところですが)



蔵元手書きのメニュー。
拙者、今回大きなミスを3つしてまして、1つがこのメニューを貰って帰るのを忘れたということ。
(´・ω・`)ショボーン


友人と2人でおじゃましたんですが、まぁ2人ならカウンターもあるだろうということで予約をしないという暴挙でして、ちょっと出遅れた19時半頃についたら満席というトラップ。えぇ、準備が行き届かない子でございます。
これが2つ目の大失態(´・ω・`)ショボーン

でもですね、富田さんに会いに来ましたと伝えると、お店の方が立ち飲みでよければと入り口にスペースを作って頂き、なんとも残念な客に大変やさしいサービスをして頂きました。


ウェルカムドリンクは龍宮生姜スパークリング。
家でも試してますが、本当の味を確認なわけです。

うん、美味いなぁ。我が家は元々漬け込みをしようかと思って新生姜で試したのですが、それよりもぴりりとした刺激が強い。そして龍宮は意外と薄め。
蔵元が瓶に作ってあるのを注いでくださったんですが、炭酸もキツメのままキリリと冷えてる。
ということは、ちょっと多めに瓶で作って、氷を使わず冷やしたほうがピリリとキリリが相まってよろしいということですなぁ。

グラスには少しの氷でして、ほんのり薄まっていく変化を楽しむ程度。最後までくっきりした味を楽しめました。



立ち飲みでアテがないのをかわいそうと思ってくださったのか、徳南製糖さんの生黒糖を頂く。
友人は生黒糖で飲む龍宮は初体験で、めくるめく食感と甘みとミネラルに完全にヤラれておりました。そうじゃろそうじゃろ。



続いてはお馴染みの龍宮ドライモヒート。
蔵元が、濃い目に作ったよって持ってきてくださいましたが、いやはやなんとも、これまでのモヒートより美味い、というか完成度が高い。あれですね、ここにきてレシピが完成したということでしょうか。あまりの美味しさにお代わりしてしまいました。
ちなみにミントも島のものを持ってきてくださったとのことで、我が家のスペアミントよりもミント感が強く青さが薄い気がします。風味の違いは風土の違いでござるなぁ。

お店の方とこのモヒートについて話してたら、確実に美味しく作るならミントを漬け込むといいよと。やっぱりそうですか。我が家のミントが元気なうちに、ちょっと作ってみようかなと。



席が空いたので、料理のオーダーと共に本日の主役である美山錦をロックで。そして途中から加水してゆるゆると水割り。
感想は先日書いたときと変わらず、米の味が来て、黒糖の味が残るという新しい黒糖焼酎の佇まい。

そんな主役の美山錦、友人の分の四合瓶を購入してあったのでこの場で渡したんですね。
そしたら蔵元に一筆入れてもらうという龍宮好きには羨ましさ満載の出来事。
全く考えてなかったなぁ。それなら僕も持ってきたのに。我が家の一升瓶を。




蔵元特製、鶏もも肉と冬瓜の煮物。冬瓜の水分だけで煮ていて、いやもう絶品の出汁。
赤坂のまるしげさんで頂いた冬瓜は豚軟骨だったのですが、鶏の今回はそれに比べて冬瓜の味が強く出るよりやさしい味わいで、細身の繊細な美山錦とのバランスがたまらんですよ。



締めに頼もうと思ってたけど、空腹に負けて速攻お願いした油そーめん。
前回よりちょっと太めのそーめん。この柔らかさも美味しい。細めのものより出汁を含むため、全体的に主張が柔らかくなってる。

そしてやっぱりキビナゴの味。我が家はとても美味しい鰯の生干しで作るんですが、もちろん美味しいけど繊細に欠けるんですよね。キビナゴすごい。



蔵元料理以外にも、夢酒SanMAのお料理をいろいろと。
鎌倉野菜のテリーヌ。野菜味が濃くてとても美味しかった。ソースも美味しいんだけど、野菜味だけで満足するクオリティ。



鎌倉野菜と自家製ベーコンのピッツァ。タコと新ジャガの唐揚げ。気仙沼産タコと水なすのカルパッチョ。などなど。

いずれも美味しかったですが、特に水なすとタコの組合せは白眉でした。食感の違いと甘さと潮味のコントラスト。



だらだら飲むようの肴。
結構キツメの味なわけでして、焼酎よりも日本酒に向いたモノたちなんですよ。

でもそんなことをものともせず包み込む龍宮の懐深さ。いずれの珍味と合わせても、新しい味の出会いになるのがよく判りました。相手を選びませんねぇ。



閉店間際。締めに頂いたのは古酒かめ仕込み。
樽貯蔵の5年熟成で、なんせ量が少ないのでめったにお目にかかれない一本です。

盃に鼻を近づけるまでもなく漂う甘い香り。
紅さんごを飲んだ時に感じたようなミルキーな味わいが奥にあり、でも含み香は妙なフルーティーさを振りまく。パッションフルーツとかそんな印象。
後味は苦く、ガツンと痺れさせて締める。香りから口に含み、舌で転がしている間に感じるキレとはまた一線を画す後味。
後味の苦味と肴をあわせるという不思議な飲み方を体験したわけなんです。



蔵元はソムリエをしつつ、お酒も作りつつ、大変お忙しそうでして、誠にお疲れ様でございます。おかげでファンは大変充実したお酒を頂いた次第でして。

ご挨拶をして、大満足で帰路についたわけなんです。


…が、えぇ、忘れてましたよ。

3つ目の大失態。調子に乗って色々飲んでたら、抹茶のカクテルを頼みそこねてました。
(´・ω・`)ショボーン

抹茶と龍宮のコラボレーション。和のカクテル。
これも蔵元にレシピを聞いてまして、既に我が家では水割り版を試してるんです。それがまたとても美味しく新しく、蔵元が作る本物を飲んでこなきゃいけないと思ってたんですけどねぇ…なんで忘れてたんだろう…

やっぱり、未だにお会いすると緊張して嬉しくなっちゃって、どこか平常心を保てないんですね。
またの機会を楽しみにするとします。


夢酒SanMA
東京都目黒区目黒1-3-14
ホテルウィングインターナショナル目黒1F
03-5496-1104

2013年9月14日土曜日

まーらん舟 原酒 2011

開いていたまーらん舟を空けちゃったので、再入手可能な最近のビンテージを開栓。
毎度、まーらん舟の栓を抜く時は厳かな気持ちになります。


まーらんモヒート。
まーらん6、冷やした炭酸4くらい。スペアミントは3枚をギュギュっと潰して。
富田さんに作ってもらったのには及ばないものの、かなりいい出来。うまいなー。


ストレート。
甘みより先にアルコールが立つ香り。まだ若いということなのか。そして奥にある黒糖の味が欲しくてたまらない、誘う香り。

口に含むと、度数の高さの割に爽やか。なんだ?めっちゃさらりと甘味と辛味が駆け抜ける。ねっとりは後味で口に残って湧き出てくるけど、とにかく最初の印象が妙に爽やか。

鼻に抜くとミネラル分が甘さを包んで優しく香る。奥深い味わい。口に含んでる時間の違いで味が変わる。変わるは言い過ぎで、波打つといった感じかな。痺れる美味しさ。


徳南製糖の生黒糖2012年のものと合わせる。
ある種のドーピングなわけですけど、これがまた不思議な組合せ。まーらんの辛味を消して、食べた黒糖の味は溶けきって、黒糖の甘みじゃなくてまーらん舟の甘みが引き立つ。なにこのマジック。

年を経て行くと、こんな感じになっていくのかなぁ。
じっくりじんわり楽しませていただきます。





まーらん舟 原酒 2011
有限会社富田酒造場
アルコール度数 41度