2013年4月27日土曜日

王祿 純米 無濾過生原酒 長期熟成 16BY

202本の幸せ。そのうちの1本、貴重な蔵元熟成酒。

王祿酒造さんは酒が良い味わいになったら出荷すると聞いてますので、普段よく飲む本醸造でもBYが意外と古かったりしてびっくりします。

といっても、ここまでの長い期間を経たものは初めて。大変貴重なものでございます。


冷蔵庫からのキンキン冷や冷やでスタート。

香りは熟成ものらしいナッツ系の濃厚な香り。でも奥に樽香にも似た若々しい香りも。

口に含むと膨らみがすごい。きっちり冷やしてあるにも関わらず、冷たさを感じないといいますか。
刺激は少なく濃厚にして綺麗。舌の上で旨さの表情が次々に変わる。甘さ、苦さが旨味になって折重なる。甘い辛い苦いなんて単純な味じゃなくて、なんだろう、例えば煮干の旨みとコク、苦味があるような、そんな自然の恵みの複雑な味わいに似ている。

喉を通るときに若い爽やかな味も。これが元の味なのかな?そして香りの元なのかな?

この佇まいは年を重ねて出来るもの、というのはよくわかるコクでして、そこは熟成酒のわかりやすい部分なんだけど、このお酒にはどこか若々しい味が残る。熟成が足りないという意味ではなくて、古酒と新酒が同居してる不思議な感じ。

そしてグラス一杯飲む間にどんどん熟成感が抜けて、若々しさが蘇ってくる。でも、香りには熟成の濃厚さが。新旧のバランスがめまぐるしく変わる。

口の中の余韻、そして鼻に抜く余韻と相まって、飲み終えるとむふーって味わいを繰り返したくなる、っているかむふーってなっちゃう。

もったいないというのもあるけども、空気に触れてからの変化を楽しもう。これは一日一杯まで。



開けて一週間ちょっと。また一杯飲んでみる。

大きくは変化してない。甘みが少し増したかな?って感じで、リンゴに蜜が溜まったというべきか。ベタつく甘みじゃなくて濃厚になったみたい。その分若さの部分は減ったかも。

香りはコーヒーのような風味もプラス。冷蔵庫直後なのに、浮き上がる、漂うみたいな感じでよく香る。プンプンするのとはちょっと違う。

香りも味も、全体的に艶が出たというイメージ。チョコをテンパリングして艶出ししましたみたいな。まぁやったことあるわけないですけど。



開けて二週間ちょっと。また一杯。

変化がわかりやすく出てきてる。特に香りの濃厚さがすごい。醤油樽みたいな発酵臭。あぁこう書くとなんじゃそりゃって感じですけど、魅惑の香りなんですよ。

味にもコクの旨苦が強く出てきた。開けた時よりも随分どっしりしたんだけど、爽やかどっしり。まだ不思議な爽やかさもある。アタックがキツくないからかな。直ぐに口の中がブワってなるけど。

平目と合わせる。コクを足す。ものすごく合う。酒が強すぎるかと思いきやよく交じる。



開けて一ヶ月。辛口純米の新酒と飲み比べる。

相変わらず迫力がすごい。味の変化はほどほど落ち着いてきたかな。いや、落ち着いてきたというよりは、在るべきところに定まったというか。辛口純米のポストでも書いたけど、余韻が素晴らしい。香りと味のバランスが今すごくいいんだろうなと。



開けて二ヶ月。香りが濃密に貯めこまれてる。カカオ。トリュフの箱を開けたみたい。まったく弱ってない。

酸味と苦味がすごい。ブワッと来てすっと消える酸味。強くなくて片鱗を見せてすぐ消える。入れ替わり出てくるのはカカオの苦味。ほんと、先入観無しで飲んだらチョコと間違えるですよ。余韻は苦味。薄れてくると土とか炭とかみたいな香ばしさ。そしてまた酸味が顔を覗かせる。

ますます刺激が無くなってツルツルする。洗練されたというとパンチがなくなったように感じるし、丸くなったは意味はわかるけどなんかそぐわない言葉。なんて言うのがいいんだろう。



開けて二ヶ月半。
チョコチョコチョコチョコチョコの香りのあとに、妙な爽やかさ。開けてすぐにも感じたけど、まだこの感じが残ってるのが不思議。それどころか華開いて、爽やかというかフレッシュジューシー。果物の果肉ような存在感。なんの味だろうなー。

喉をとおり余韻はコーヒー。ちなみに口でグチュグチュしてよく空気に触れさせて味を膨らますと、カフェオレ。乳酸系のミルクっぽい部分が伸びて苦味を穏やかにして面白い。




開けて三ヶ月、最後の一杯。
ちびちびやってきましたが、ダレるなんて言葉からは程遠く、濃厚さが形を変えて漂い続けました。
ここまで引っ張ると、舌触りは落ち着いて大人しい。舌の上で転がすともう一度華開く、香ばしさと甘み。

ウドと小松菜の白和えと合わせる。ゴマの香りと混じり合うと、奥にある爽やかさがまた引っ張り出される。



熟成酒の凄みを体感させて頂きました。濃厚さの奥にある爽やかさが、醸造直後の面影を残してて時の流れが不思議に感じます。
達磨正宗さんの熟成酒だと10年とか飲んだことありますけど、熟成と言ってもこれはまた違った種類のお酒だったなぁと。

日本酒100年貯蔵プロジェクトってあるんですよね。もっと将来には、日本酒もビンテージを味わうような文化が根付いてるといいなと思ってしまいます。





王祿 純米 無濾過生原酒 長期熟成 16BY
王祿酒造有限会社
精米歩合 60%
酸度 2.0
日本酒度 +2.4

横浜君嶋屋さんで購入。

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