初めて龍宮を飲んだ時のことは、よく覚えている。
それは40度のかめ仕込み、21世紀になったばかりのこと。
何年の何月何日なんてことは覚えてないのだけど、あの感覚を覚えているのだ。ガツンと脳が痺れたあの瞬間。
あれから十数年。龍宮を飲まなかった年は無い。毎年、かめ仕込みも、30度の龍宮も、らんかんもまーらん舟も、いつも何かは家にあった。
そしていつもロックで飲んでた。
初めて飲んだのがロックだったこともあり、水割りとかお湯割りとか、薄めて飲んでる人をせせら笑っていた。こんなに美味いものを薄めるとか、あいつらは味を判ってないと中二病全開だった。ロックだって薄まるんだけど、水割りと違って薄まる過程が大事だとか偉そうに語ってた。
でも、ロックで飲むのが本当に美味しいと思ってたから、それが単なるスタイルだったとも思わない。氷が溶けて味が変わっていく様は本当に魅力的だから、それは今でも言い続けている。
ある日、富田さんのブログでまーらん舟モヒートの記事を読んだ。
蔵元が勧めてるんだから美味しいに違いない、と思ったものの、自分でやる度胸はなかった。
これが美味しいかったら、これまで自分でこだわりってたことに意味が無くなっていまうと思ったのかもしれない。
昨年、奄美を訪れる機会があった。もちろん富田酒造場にも足を運んだ。酒造りの忙しい時期にも関わらず、蔵を見学させてもらった。
そして厚かましくも、あのまーらん舟のモヒートが飲みたいと言った。わざわざミントを摘んで作ってくださった味は、想像していたものと全く違っていた。単なる香り付けとかそういう次元じゃなくて、それは新しい飲み物だった。
その年の初夏、自宅にミントを植えた。
モヒートには(キューバでは違うけど日本では)スペアミントだけど、苗も種も近所には売ってなかった。時期の問題なのか判らなかったけど、とりあえずペパーミントを植えた。
虫とか虫とかいろいろあったけど、最終的にはよく育って自家製まーらん舟モヒートを楽しむことができた。なにか物足りないのは、ミントの種類なのか自分で作ったからなのか、でもそれなりに満足していた。蔵元と同じ楽しみ方をすることに満足していたんだと、今になれば思う。
今年、鹿児島を旅した。
水割りとかお湯割りとか、焼酎の楽しみ方を学んだ。
自宅に戻って、十数年目にして初めて龍宮の水割りを飲んだ。そしてお湯割りも飲んだ。
激しく後悔をした。こんなに楽しいことを今まで知らなかったという事実。でもその後悔と向き合うのに困難はなかった。美味しさは、いとも容易く僕の宗旨を変えてくれた。
今年はスペアミントを植えた。ちょっとくらいなら摘んでもいいかな?ってくらいには育った。
そして今日、龍宮にミントを浮かべて炭酸で割った。肴は出汁醤油と辛子のカツオ刺し。
どちらも、Facebookで読んだ富田さんの文章に触発されたやりかただけど、分量とかにこだわりなく、自分なりの美味しさを楽しむことができた。
脳みそから痺れが解けていった気がした。
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